長年ご愛用されてきた家具について、
メンテナンスのご相談をいただきました。
大阪にお住いの Iさまからご相談いただのは、10年ほど前に購入された
ヴィンテージの一人がけ= armchair のクッション生地張替、
そしてフレーム( 木部 )のリフレッシュ、オイルがけメンテナンスについて。
デンマークのヴィンテージ家具には、過去にバイヤーとして
少なからず関わっていた経験もあることから、このご相談をいただいた時は
当時を思い出さずにはいられませんでした。10年ひと昔ですね。
では作業内容のご紹介を。
クッション生地張替は信頼できる腕の良い職人に託し、
私はフレーム( 木部 )のリフレッシュ=オイルがけメンテナンスを担当します。
まずは「 before 」=張替・オイルがけ前の状態です。
design;Hans J. Wegner( デンマーク )
material;oak
description;
GETAMA社製ヴィンテージ( 制作年不明 )
condition;
座面の生地が裂け、クッション中材にへたりあり
フレーム( 肘掛 )に輪染みあり、乾燥気味
フレーム( 肘掛 )に輪染みあり、乾燥気味
座面受けの金具が外れている
生地張替の段取りをつけます。
私はさっそく、オイルがけメンテナンスをスタート。
以下、「 after 」=張替・オイルがけ後の状態です。
薄く削りながら汚れを落とし、同時にオイルを染み込ませていきます。
あまりやりすぎる( 削りすぎる )と強いムラが生まれるので、
特に目立っていた肘掛の輪染みを取ることを最優先に考えて作業を進めます。
もちろん見える範囲だけでなく、普段見ない部分=裏面も磨いていきます。
サンダーがけすればもっと深く削れますが、それは同時に経年変化で
深みの出てきた色味を損なうことになるため是ではないと判断し、
若干のムラは殘るもののでオイルがけはこの状態で完了としました。
いたのですが、作業にあたる職人側から中材の状態が良いことと、
全交換することでかなり座り心地が変化する( 硬くなる )ことを
考えると、「 補充 」で留めておく方が適切だ、という提案を受けました。
クッションの芯にワイヤーやスプリングを使っているものなどは、
そのクッション材を巻き直すとかなり硬くなるんですよね。
それは座り心地を( 人によっては )劇的に変化させる可能性もあり、
当面交換の必要性がないぐらいの状態であれば、ある程度の柔らかさを
残す状態で留める方が適切、正解の場合もあるんです。
今回はまさにそのケースで、職人がその部分でストッパーとなって
提案をしてくれたことに感謝するばかりでした。
20世紀を代表する家具デザイナー、ハンス・ウェグナー( デンマーク )。
氏が1953年にデザインし、今なお高い人気を誇る不朽の名作のひとつです。
" GE " とは、制作を担う GETAMA社 のイニシャルから取ったもので、
ウェグナーがデザインした多くの家具を現在も制作し続けています。
「 The Chair 」や「 Y chair 」といった名称や愛称がついているものもあれば、
制作会社のイニシャルを冠する、謂わば品番で呼ばれるものもあります。
冒頭でも少し書いたデンマークへ渡航していた頃には、事前にお客さまからの
リクエストを多くいただいていたのがこちらのシリーズ。
ハイバックや 2s も人気で、良い状態のものがあれば必ず購入していました。
大きく傾斜する構造が深く、心地よい座り心地を生み出し、一度座ると
立ち上がれなくなること必至の逸品です。
生地張替やクッション材の調整は、単純に座り心地だけではなく、
椅子の造形が本来持っているプロポーション=デザイナーの意図する形を
復活させることでもあるんだな、と改めて認識しました。
翻って普段の自分は・・・と、反省することも多々あり。
手入れをしないまま使っているビューロー、きれいにしてあげないと。
ご相談、そしてご依頼いただいた Iさま、ありがとうございました。
久しぶりのオイルがけメンテナンス、存分に楽しませてもらいました。
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posted by;堀